二月下旬、鹿児島の指宿に行ってきました。
まだ二月だというのに、いたるところに梅が咲いて、すっかり春の陽気。その一週間前には、豪雪の福井にいたために、余計、春の日差しがまぶしく感じられました。指宿といえば砂蒸し温泉。あるいは気温のみならず、地熱の暖かも加わっているのかもしれません。指宿からちょっと行ったところには「地熱発電所」もありました。
さて今回の目的は揖宿(いぶすき)神社の仮面調査。
揖宿神社は薩摩一宮枚聞神社の分社で、十数面の仮面が所蔵されています。
戦前まで神舞という神楽系の芸能に使われていた仮面で、その中には、古い能面が転用されているものもいくつか含まれていて、能面の歴史を考えるうえでも興味深いものです。
うち、三面は室町後期の古面として鹿児島県指定文化財に指定されていますが、今回調査をしてみると、他の面もそれとさほど時代が隔たらない古面であることが判明しました。
ただ、惜しむらくは、保存があまりよくないこと。彫刻刀で仮面の裏面を幾筋にも削り取ったような跡が多数みられました。
宮司さん曰く、「シロアリが食べた跡です」。
中には、よくまあこれほど食べつくしたなあ、と思えるほど、シロアリに見事に浸食されたものもありました。
ところが、中には同じような面でも、まったく無傷のものもあります。なんとも不思議に思われましたが、これは楠で作られたものだそうで、樟脳と同じように、木そのものに虫よけの効果があったらしいとのことです。
写真は県指定の三面と、開聞岳を望むJR日本最南端の駅。