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2011/08/29

死者と楽しむ盆踊り



能を専門にしておきながら、ここでこんなことを言うのはちょっと憚られるのですが、いろんな芸能の中で私がもっともこよなく愛しているのが「盆踊り」です。


盆に合わせて故郷に帰ってくる死者、その死者を懐かしんで、亡き人の生前に想いをはせる生者。それぞれが様々な思いをかかえながら、交歓のひと時を過ごす。でも、その楽しい時間はやがて夜が明けるとともに過ぎ去っていく。夏の夜の独特の雰囲気とともに、そんな切なさを感じさせるところが、たまらなくいいのです。


それで毎年夏になると各地の盆踊りを見て回るのが恒例になっています。昨年は大分の姫島まで遠出しましたが、今年は関西の自宅から車で十分足らずのところにある木津川市上狛のしょうらい踊りに行ってきました。


踊り場には祭壇に盆灯籠がいくつも並べられ、その前で踊られます。踊り子が全員白装束なのは、死装束を表しているとのこと。つまり、死者と同じ姿になって、ともに踊っているということなのでしょう。

「死者と共に楽しむ」という盆踊り本来の姿が、きちんと残っていることに大きな感銘を受けました。


今では盆踊りといえば江州音頭や阿波踊りが全国を席巻していますが、地域色豊かなこうした盆踊りもまた、失われることなく長く続いてほしいものです。



2011/08/26

ちょっと新しい研究



 8月8日の世阿弥忌セミナーで、ここ数年来、工学系の先生たちと協力しておこなっている文理融合研究の中間発表をしてきました。下にアップしたのはその研究成果の一部です。画面の黒装束の人形は、能「鶴亀」の仕舞を舞っています。これは、能役者のかたに鶴亀を舞って頂いてそれをCGにしたのでは「ありません」。そうではなくて、サシ・ヒラキ・左右etc. 能の所作単元を別々に(鶴亀とは関係なく)撮影してデータベースにしておき、型付に出てくる順番に引用して合成したものです。まだ、いろいろと変なところはありますが、何度も試行錯誤を重ねた結果、とても高いソフトを使えばこのぐらいまで復元できることが判りました。



今、誰もが簡単にこうした合成作業ができるようなビューアの作成に向けて研究を進めています。この研究が目指しているのは次のようなことです。



1)型付に記されている情報だけを頼りに、こうした技術でできるかぎり正確に復元した舞と、実際に能役者が舞う舞をくらべ、型付に記されてはいないけれど能役者が自然に身につけている、所作単元と所作単元をつなぐ部分の知恵を明らかにする。



2)今まで解読がむずかしかった古い型付資料の解読にこのツールを利用する。資料に出てくる所作単元をつなぎ、1の作業で得た知識を使いながら、古い演出をある程度復元することは可能なはず。



以上、ちょっと新しめの研究のご紹介でした。






2011/08/23

日本文學誌要&能楽研究


今年の夏も大変暑いですが、みなさま体調を崩していないでしょうか?
数日前から急に涼しくなり、少し頭が働いてきたせいでしょうか、大切なお知らせを掲載し忘れていたことに気づきました。
先月、能楽研究所の紀要『能楽研究』35号、法政大学国文学会誌『日本文學誌要』84号が刊行されました。

『能楽研究』は宮本所員、中司所員の論文、山中所長・深沢希望氏(法大院生)作成の型付索引、そして充実(?)の研究展望・能界展望が掲載されています。詳しくは、能楽研究所のWEBサイトを御覧ください。
http://www9.i.hosei.ac.jp/~nohken/kiyo-mokuji31.html#nogakukenkyu35

『日本文學誌要』は昨年9月にお亡くなりになった表章先生の追悼号となっています。追悼文と論文のほかに、「表章先生の仕事」と題して、諸先生方に表先生の研究を回顧していただいております。詳しくは、法政大学文学部日本文学科のWEBサイトを御覧ください。
http://nichibun.ws.hosei.ac.jp/wp/?p=239






2011/08/05

法政大学エクステンションカレッジ「大人のための古典文学」が、チャリティ講座として開講されます

法政大学エクステンションカレッジでは、2003年度より「大人のための古典文学」と題する教養講座を開講してきました。本講座は法政大学で古典文学を専攻する教員が、毎年一つのテーマのもと、リレー形式で各時代の作品を講読してゆくというものです。

本年度、エクステンションカレッジでは、東日本大震災の復興支援の一環として「チャリティ講座」を開講することになりました。そして、「大人のための古典文学」もチャリティ講座として開講されます。チャリティ講座では受講料の一部を寄付金といたします。古典文学に触れてみたいと思う方々に、ぜひともご参加いただきたく、ご案内申しあげます。講座の概要は以下のとおりです。

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大人のための古典文学
「試練のときに――文学の力、あるいは文学の非力」


 あまりにも大きな爪痕を残し、現在も止まるところを知らない災禍を目の当たりにし、命とは、人間とは、文明とは…と多くのことを考えざるを得ない日々が続いています。
 そんな今、古典文学はあまりにも非力です。それでも、この列島に生きた人々がどのように厳しい自然の試練や人間自身の過ちによる危機に向き合ってきたのか、そこであらゆる喪失をどう受け止め、悲哀をいかに生き抜いてきたのか、さまざまに描いてきた作品があります。災害に限らずとも、人が自然にどのような目を向け、どう関わってきたのか、あるいは、人と人がどのように心を寄せ合い生きてきたのか、古代以来の文学が記録してきた人間の営み、人の生の捉え方から、今日を生きる私たちが学べることはないでしょうか。地震研究において古代からの記録の意義が見直されているように、いにしえの人々の言葉に耳を傾け、一緒に思いをめぐらせてみませんか。

各回の講師・テーマ

10月 8日(土) 田中優子(社会学部教授)
 「震災を読む、闇を読む―新井白石の自伝文学『折たく柴の記』 その他より―」

10月15日(土) 横山泰子(理工学部教授)
 「安政の大地震と関東大震災をめぐる語り」 

10月29日(土) 小林ふみ子(文学部准教授)
 「天災と人災に向き合う江戸の知恵―杉田玄白『後見草』と天明狂歌師たち―」

11月19日(土) 阿部真弓(文学部教授)
 「野分の風を見つめる人々-『枕草子』『源氏物語』を中心に -」

11月26日(土) 山中玲子(能楽研究所教授)
 「寄り添う心―『発心集』―」 

12月 3日(土) 小秋元段(文学部教授)
 「中世の災害を生きる―『方丈記』―」

12月10日(土) 伊海孝充(文学部専任講師)
 「水を司る龍―能〈河水〉―」

時間は毎回、13:30~15:40です。

定員 100名

受講料 一般5,000円、大学生・大学院生3,000円、高校生1,000円

 (「大人のための古典文学」では受講料の50%以上を寄付金とする予定です)

後援 法政大学 国際日本学研究所 能楽研究所 文学部日本文学科

申し込み 法政大学エクステンションカレッジ 03(3264)6243 https://www.hosei.org/ (ホームページからの申し込みが可能です)

なお、同じチャリティ講座として、「尾木ママが語る「大震災後の子どもと教育」」、沖縄文化講座「沖縄の音色と共に沖縄文化にふれる」が開講されます。詳細はチラシをご覧ください。

2011/08/02

能研 by AERA











受験生を対象にした大学紹介の雑誌「AERA ムック」の法政大学バージョンが発売されました。
法政を代表する研究所として、われらが能研も見開きで紹介されています。

タイトルには
      「能楽研究をリードする総本山」 
       「質量ともに「世界一」
      「能研究者なら誰もが訪れる」
とすごい文句が並んでいます。
「質量ともに「世界一」」は、能研スタッフのこと、ではなく、おそらく蔵書のことだと思います。残念。

全身法政カラーに包まれたインパクトある表紙。書店で手にとるのはちょっと恥ずかしいかも知れませんが、ぜひ御覧ください。