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2011/07/10

七夕古書大入札会のこと

七夕古書大入札会が行われました。7月8・9日が一般の人も参加できる下見で、今日(10日)が業者による入札日です。私たちのもとには事前に図版入りの目録が届くので、それを見て入札を検討します。そして、下見で実物を見て、購入するかどうか、入札金額をどうするか、決定します。入札金額については、懇意な古書業者に相談することもあります。

さて、今回、目を引いたのは、慶長刊の古活字版『徒然草』です。慶長期を代表する美本、嵯峨本の前段階に位置づけられる本で、色替わりの料紙に雲母刷文様が施されています。書体は嵯峨本とは異なりやや古朴で、まことに嵯峨本の前形態というにふさわしい貴重な本です。で、最低入札価格は2000万円。誰が入札するんでしょう?

それから、八十島道除筆『今川壁書』。こちらは能書家による鑑賞用、書道のお手本用としての写本で、やはり料紙は色替わりで雲母刷文様が施されています。色替わり、雲母刷の料紙は嵯峨本のトレードマークのようなものですが、この装訂による写本もいくつか知られています。『今川壁書』はまさにその一つなのです。最低入札価格は5万円。これなら個人でも入札できる!

しかし、この本、知る人ぞ知る資料で、林屋辰三郎ほか編『光悦』に紹介され、1999年にMOA美術館で開催された特別展「光悦と能―華麗なる謡本の世界―」にも出品されたことのある名品なのです。下見会場にはご丁寧にも(余計なことに)その際の図録のコピーも並べられていました。

救いは、この本が「古典籍」のコーナーではなく、「古文書」のコーナーに出ていたこと。そして、目録での扱いもささやかで、多くの人に見過ごされている可能性もあります(なわけないか)。ともあれ、それを頼みに私も・・・・・・。