先日の七夕古書大入札会で挑んだ色替わり雲母摺文様料紙の『今川壁書』は、1万円の差で落札できませんでした。残念。
そんな折、静嘉堂文庫美術館で開催されている「日本における辞書の歩み」展に行ったところ、おもしろい資料に出会いました。色替わりの料紙を使用した『倭名類聚鈔』です。江戸時代初期書写とのこと。『倭名類聚鈔』は平安時代、源順(みなもとのしたごう)が編纂した辞書で、江戸時代には出版もされて大いに読まれました。
幾色の料紙が使われているのかわかりませんでしたが、こんな遊び心のある辞書を使うのは楽しいでしょうね。
会期は7月31日まで。東急田園都市線二子玉川駅からバスで10分です。静嘉堂文庫美術館は三菱財閥の岩崎彌之助・小彌太収集の古書・古美術品を収蔵する美術館です。門を入り、200メートルほどの森をゆるやかに登ると、現在も文庫として使われている洋館と、美術館の新館が現れます。とてもよい雰囲気です。おっと、向こうから地井さんが・・・・・・。
2011/07/22
2011/07/15
上手下手なし
先日、山中所長とともに名古屋に行ってきました。能研に寄贈いただくことになった幸流小鼓方の名家、山崎家伝来の資料を受け取るためです。
といっても、手で運ぶのではなく、運送はすべて日通さんにお願いしましたので、梱包作業は任せっきり。とっても手際のよく、かつどこまでも行き届いた梱包ぶりに、山崎家の資料を伝えてこられた中條さんと、山中・宮本はともに感嘆しきりでした。
さて、その山崎家伝来の資料、能研の書庫にしっかりおしまいしていましたが、今日は所員のスタッフが沢山来ていましたので、ちょっとお披露目です。
一番左の鼓胴には「無上手下手」の銘があり、上手でも下手でも見事な美音を奏でるという名胴。京都を襲った元治の大火の時も、山崎家の先祖が抱えて救出し、なんとか無事だったと伝えられています。
それにしても、鼓胴に施された蒔絵のすばらしいこと。所員一同、目の保養をさせていただきました。でも、やはりナマ音を聞いてみたい。いつか、この名胴を実際に聞く催しも計画しようと思っています。最後になりましたが、貴重な資料をご寄贈いただいた中條様にあつく御礼申し上げます。
2011/07/10
七夕古書大入札会のこと
七夕古書大入札会が行われました。7月8・9日が一般の人も参加できる下見で、今日(10日)が業者による入札日です。私たちのもとには事前に図版入りの目録が届くので、それを見て入札を検討します。そして、下見で実物を見て、購入するかどうか、入札金額をどうするか、決定します。入札金額については、懇意な古書業者に相談することもあります。
さて、今回、目を引いたのは、慶長刊の古活字版『徒然草』です。慶長期を代表する美本、嵯峨本の前段階に位置づけられる本で、色替わりの料紙に雲母刷文様が施されています。書体は嵯峨本とは異なりやや古朴で、まことに嵯峨本の前形態というにふさわしい貴重な本です。で、最低入札価格は2000万円。誰が入札するんでしょう?
それから、八十島道除筆『今川壁書』。こちらは能書家による鑑賞用、書道のお手本用としての写本で、やはり料紙は色替わりで雲母刷文様が施されています。色替わり、雲母刷の料紙は嵯峨本のトレードマークのようなものですが、この装訂による写本もいくつか知られています。『今川壁書』はまさにその一つなのです。最低入札価格は5万円。これなら個人でも入札できる!
しかし、この本、知る人ぞ知る資料で、林屋辰三郎ほか編『光悦』に紹介され、1999年にMOA美術館で開催された特別展「光悦と能―華麗なる謡本の世界―」にも出品されたことのある名品なのです。下見会場にはご丁寧にも(余計なことに)その際の図録のコピーも並べられていました。
救いは、この本が「古典籍」のコーナーではなく、「古文書」のコーナーに出ていたこと。そして、目録での扱いもささやかで、多くの人に見過ごされている可能性もあります(なわけないか)。ともあれ、それを頼みに私も・・・・・・。
さて、今回、目を引いたのは、慶長刊の古活字版『徒然草』です。慶長期を代表する美本、嵯峨本の前段階に位置づけられる本で、色替わりの料紙に雲母刷文様が施されています。書体は嵯峨本とは異なりやや古朴で、まことに嵯峨本の前形態というにふさわしい貴重な本です。で、最低入札価格は2000万円。誰が入札するんでしょう?
それから、八十島道除筆『今川壁書』。こちらは能書家による鑑賞用、書道のお手本用としての写本で、やはり料紙は色替わりで雲母刷文様が施されています。色替わり、雲母刷の料紙は嵯峨本のトレードマークのようなものですが、この装訂による写本もいくつか知られています。『今川壁書』はまさにその一つなのです。最低入札価格は5万円。これなら個人でも入札できる!
しかし、この本、知る人ぞ知る資料で、林屋辰三郎ほか編『光悦』に紹介され、1999年にMOA美術館で開催された特別展「光悦と能―華麗なる謡本の世界―」にも出品されたことのある名品なのです。下見会場にはご丁寧にも(余計なことに)その際の図録のコピーも並べられていました。
救いは、この本が「古典籍」のコーナーではなく、「古文書」のコーナーに出ていたこと。そして、目録での扱いもささやかで、多くの人に見過ごされている可能性もあります(なわけないか)。ともあれ、それを頼みに私も・・・・・・。
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