GWで混む前に…と思って白洲正子展に行ってきました。
出品物は本当に豪華です。すばらしい仏像も曼荼羅図も女神像も古面も…。わたしは特に、平等院の「雲中供養菩薩像(北一号)」(小さな箏のような楽器を弾いている)と、鎌倉時代の相撲人形が気に入りました。
面白いのは、個々の展示物には主催者の解説を付けず、かわりに白洲正子がそれについて書いたエッセイを掲げていること。「白洲正子が訪ねた、寺社の名宝約120件を一挙公開」という宣伝文句にふさわしい、面白いやり方だなと思いました。
ただ、そのため、ちょっと困ったこともありました。実は、白洲正子さんが『二曲三体人形図』について書かれた時にご覧になっていたのは、今回出品している禅竹透き写しの写本ではなく、もっとずっと後の時代のかなり違った雰囲気の絵です(講談社文芸文庫の、白洲正子『世阿弥』で見ることができます)。そこでは、力動風の絵から梅の花が消えてしまっています。その絵に基づいて、今回の展示でも、
世阿弥の中で「花」というものが、能をつらぬく一つの思想と化していたことがわかるが、…(中略)…砕動風に至ると、花が次第に少くなり、力動風ではまったくなくなってしまうのも、烈しい動きの能では、美しい風情も、幽玄な趣も、影をひそめるからである。
と説明されているのですが、実際に展示されているのは禅竹の忠実な写本なので、力動風にもちゃんと梅の花の絵が描きこまれているのです。こういうところなどは、少しだけでも別の人の補足説明があった方がわかりやすいな、と思いました。あるいは、こういう問題のない他の場所の絵を出しておけば良いのかもしれません。貴重な資料なので、同じ頁ばかり開かないように、展示する頁を変えていて、たまたま今日は力動風の頁が出ていたのかもしれませんが…。
出口のところに飾ってあった、壺を手にして座っている白州さんの写真がとても美しいのも印象的でした。砧公園の中の美術館。新緑もすばらしく、やっぱりおすすめの展覧会です。