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2011/04/25

只今開催中


震災の日、能研は書架の本が散乱した程度で、書庫の貴重書はさいわい皆無でしたが、「あの資料」がどうなっているのかが心配でした。

「あの資料」とは、ちょうどその時、能研の外に貸し出していた「二曲三体人形図」。世阿弥が能の様々な役柄を演じる際の心構えをイラスト付きで書いた秘伝書で、能研が持っているのは、その最も古い室町時代の写本です。世阿弥の娘婿の金春禅竹が克明に透き写したもので、世阿弥自筆本の面影をもっとも良くとどめていると言われています。
そんな貴重な写本ですから、能研が始まって以来、美術館や博物館には一度も貸し出したことのない、いわば門外不出の資料でした。貸し出しを許可するかどうか、所員の間でも色々議論がありましたが、最終的に貸し出しをすることになり、搬出も無事済んだところに、この震災。もしも万一のことがあれば、その決断を大いに後悔したところですが、幸い、週明けに資料が無事であるとのご連絡をいただき、ようやく胸をなで下ろしたした次第です。

その「二曲三体人形図」が出展される「白洲正子展」が、五月八日まで世田谷美術館で開催されています。他にも、世阿弥の長男元雅が奈良の天河弁才天に寄進した有名な尉面、十二又五郎の三番叟面など、能関係の逸品がいくつか出展されています。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html

六百年の天災地災をくぐり抜けてきた強運の品々にどうぞ会いに来て下さい!