研究仲間と『校訂 京大本 太平記』を刊行しました。京大本は四系統に分類される『太平記』諸本のうちの丙類本に属します。実は、この系統の伝本が翻刻されるのははじめてなのです。『太平記』は長いので、翻刻するだけでホネが折れます。しかも、京大本は平仮名本なので、通読に耐えるよう振り漢字を施しました。ここまで来るには長い道のりでした(笑)。
京大本には他本には見られない興味深い独自記事が多いのですが、その中の一つに「田楽しづや」の曲舞が引用されていることがあげられます。巻四十一、佐々木道誉が大原野花会を催すにあたり、しづやに作らせ、舞い歌わせたというものです。本文ではその詞章が丸々引用されています。〈西行桜〉に重なる部分も多いのですが、私の実力不足で典拠未勘のところも少なくありません。興味のある方はぜひ『校訂 京大本 太平記』をお読みください。勉誠出版刊、上下二冊、1468頁、定価49,500円+税、です。図書館へのリクエストをお忘れなく!