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2011/10/25

能楽セミナーが始まりました



今年から能研の主催で行うことになった能楽セミナーが昨日から始まりました。




初回は特別講演として中国古典演劇史の世界的権威でいらっしゃる田仲一成先生(東京大学名誉教授)をお招きし、「日本の式三番・鬼能に当たる芸態は中国にかって存在したか」というタイトルでお話しいただきました。



中国江西省の山間部には古い仮面劇がいくつも伝わっていて、そこには能の「式三番」と同じような翁も登場するそうです。けれども、両者の性格は大きく違うということでした。



少しご紹介すると、「天下泰平国土安穏」を祈願する能の「翁」に対して、中国の翁は、街のおまわりさんのように、限られた地域の安全を守る最下層の土地神に過ぎないこと。そうした違いは中国の権力一極集中型の国家体制とも関係していて、国家泰平を祈願する権利は中国では皇帝にのみ許されていたこと、などなど。他にも興味深い指摘が多くありました。



最近は日本各地の民俗芸能を精力的に見て回っておられるそうで、今なお新しいテーマに取り組まれる旺盛な研究意欲に圧倒されっぱなしでしたが、来年で八十歳を迎えるとは思えない若々しさの秘密も、きっとこんなところにあるのでしょう。



能楽セミナーは来週にも、そして十一月にもあります。ご都合がつきましたら、ぜひご参加いただければと思います。