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2011/12/05

芸能の「移動」と「交流」




先週の土曜日、能楽研究所と芸能史研究会との共催により、「芸能の「移動」と「交流」」というテーマの研究会が法政大学で開催されました。



落語や歌舞伎がご専門の今岡謙太郎氏による「幕末における落語家の東西交流」、そして、見世物研究の第一人者でいらっしゃる川添裕氏の「移動・交流への三つの視座」というお二人の基調報告に続いて、中川桂氏(落語や興行史研究がご専門。私のよき先輩でもあります)の司会によるディスカッションが行われました。写真はそのディスカッションの様子。



江戸後期の諸芸能のうち、落語家と見世物興行の事例を中心に、東西間あるいは異文化間の「移動」と「交流」がどのように行われていたのか、その実態を検証するという、ちょっとマニアックな内容でしたが、観客を求めて「移動」しなければならないという「芸能」の本質を浮き彫りにした、大変示唆に富んだ研究会でした。



翻って能楽の例を考えると、江戸時代の能楽師は幕府や藩に抱えられていましたから、藩主や将軍とともに移動することはあっても、観客を求めて「移動」することはありませんでした。その意味でも、江戸時代の能楽師が置かれていた環境が、きわめて特異だったということを再認識したのですが、こうした再発見にこそ、分野の異なる研究に触れる醍醐味があるといってもいいかもしれません。それだけに、能楽の研究者がほとんど出席していなかったのは残念でした。